「60代で新NISAなんて、今さら遅いんじゃないか?」
テレビやネットニュースで「新NISA」という言葉を目にするたび、そんな考えが頭をよぎる方も多いのではないでしょうか。
正直に言います。
私もそうでした。
昨年、40年以上勤めたIT企業を定年退職し、65歳。
退職金の振り込み通知を見つめながら、ふと思ったんです。
「このお金、銀行に預けっぱなしでいいのか?」と。
銀行の普通預金の金利は、2026年現在でもまだまだ低水準。
一方でインフレは着実に進み、スーパーに並ぶ卵の値段を見ては、ため息をつく毎日。
この調子では、退職金の「額面」は変わらなくても、「価値」は確実に目減りしていきます。
そんなとき、元ITエンジニアの血が騒ぎました。
「問題があるなら、まず仕組みを調べよう」——それが40年間、バグと戦ってきた人間の性分です。
調べた結果、わかったことがあります。
60代から新NISAを始めるのは、まったく遅くありません。
むしろ、「非課税期間が無期限になった」「年齢制限がない」という新NISAの仕組みを知れば知るほど、60代こそ活用すべき制度だと確信しました。
この記事では、65歳の元ITエンジニアである私が、同世代の方に向けて、新NISAの仕組みから始め方、商品選び、そして「出口戦略」まで、ロジカルにわかりやすく解説します。
難しい金融用語は、IT用語に「翻訳」してお伝えしますので、安心してください。
読み終わる頃には、「よし、まずは口座開設してみるか」と思っていただけるはずです。

ヒロさん、新NISAってよく聞くけど…60代の私たちが今から始めて、本当に意味あるのかしら?

テルさん、その疑問は正しいですよ。でもね、結論から言うと「今が始め時」なんです。その理由を、これからじっくり説明しますね。
1. 60代から新NISAを始めても遅くない3つの理由

まず最初に、一番多い疑問に答えましょう。
「60代で投資を始めるなんて遅いんじゃないか?」
結論から言います。遅くありません。
むしろ、2024年に始まった新NISAの制度設計を見ると、60代にこそ有利な仕組みになっているんです。
その理由を3つ、お話しします。

え、年金もらう世代が投資とか大丈夫なんすか? リスクやばくない?

タケシくん、それは誤解だよ。リスクを「管理する」ことと「避ける」ことは違う。仕組みを知れば、60代でも十分に合理的な運用ができるんだ。
1.1 新NISAに年齢制限はない(iDeCoとの決定的な違い)
新NISAには、年齢の上限がありません。
18歳以上であれば、70代でも80代でも口座を開設して投資を始められます。
ここが、もう一つの有名な非課税制度「iDeCo(個人型確定拠出年金)」との決定的な違いです。
iDeCoは原則として65歳まで(一部条件で69歳まで)しか加入できません。
しかも、60歳までは原則として引き出すこともできない。
一方、新NISAはいつでも売却して現金化できるのがポイントです。
この違いをIT用語で例えるなら、こうなります。
- iDeCo = 定期契約型のクラウドサービス(途中解約できない)
- 新NISA = いつでも解約OKのサブスクリプション(自由度が高い)
60代にとって、「急にお金が必要になった」という事態は珍しくありません。
病気、介護、家のリフォーム……。
そういう時にすぐ現金化できる新NISAの柔軟性は、シニア世代にとって大きな安心材料なんです。
1.2 非課税期間が「無期限」になった革命的な変更
2024年に始まった新NISAで、最も大きな変更点。
それは非課税保有期間が「無期限」になったことです。
旧NISAでは、一般NISAが5年間、つみたてNISAが20年間という期限がありました。
60歳でつみたてNISAを始めても、80歳で非課税期間が終了。
「人生100年時代と言うのに、80歳で期限切れとは中途半端だな」と思いませんか?
新NISAでは、この制限が撤廃されました。
60歳で始めても、70歳でも、80歳でも、90歳になっても、非課税のまま運用し続けられます。
これはつまり、「時間切れ」を心配する必要がなくなったということ。
IT用語で言えば、ライセンスが「永久版」にアップグレードされたようなものです。
通常、投資で得た利益には約20.315%の税金がかかります。
100万円の利益が出れば、約20万円が税金として持っていかれる計算です。
新NISAなら、この20万円がまるまる手元に残る。
長く運用すればするほど、非課税の恩恵は大きくなります。
1.3 平均余命から見た「まだ間に合う」根拠
「でも、60代から始めたら運用期間が短いんじゃないか?」
この疑問にも、データで答えましょう。
厚生労働省の「簡易生命表(令和5年)」によると、日本人の平均余命は以下のとおりです。
| 年齢 | 男性の平均余命 | 女性の平均余命 |
| 60歳 | 約24年(84歳まで) | 約29年(89歳まで) |
| 65歳 | 約20年(85歳まで) | 約25年(90歳まで) |
| 70歳 | 約16年(86歳まで) | 約20年(90歳まで) |
60歳の男性でも、平均してあと24年。
65歳の私でも、まだ約20年あるわけです。
20年あれば、投資信託の複利効果は十分に発揮されます。
金融庁のデータでも、20年以上の長期・積立・分散投資を行った場合、元本割れのリスクは大幅に低下することが示されています。
私はこう考えています。
「老後は余生じゃない。OSの大型アップデートだ」と。
古いOSのまま放置すれば、セキュリティホール(=資産の目減り)が生まれる。
でも、アップデートすれば、まだまだ快適に動くんです。
2. そもそも新NISAとは?60代向けにわかりやすく解説

「新NISAが良いのはわかった。でも、そもそも新NISAって何なの?」
ここからは、新NISAの仕組みを60代の方にもわかりやすく、IT用語で「翻訳」しながら解説します。
2.1 新NISAの全体像をIT用語で「翻訳」してみた
新NISAを一言で言えば、「投資で得た利益に税金がかからなくなるお得な制度」です。
通常、株式投資や投資信託で利益が出ると、その利益に対して約20%の税金がかかります。
しかし、新NISAの口座で投資した分については、どれだけ利益が出ても税金はゼロ。
これを「非課税」と言います。
IT用語で翻訳すると、こんなイメージです。
- 非課税 = 通信料無料のプラン(通常20%の手数料がタダになる)
- つみたて投資枠 = 月額サブスクリプション(毎月コツコツ積み立てる、年間120万円まで)
- 成長投資枠 = 買い切り型ソフト購入(まとまった金額を一度に投資できる、年間240万円まで)
- 生涯非課税限度額1,800万円 = ストレージの上限(この容量いっぱいまで非課税で保存できる)
つまり、新NISAは「非課税枠」というストレージの中に、年間360万円ずつ、最大1,800万円まで投資商品を格納できる仕組みです。
そして、その中にある投資商品から得られた利益は、すべて税金がかからない。
しかも、商品を売却すれば、その分の「ストレージ容量」が翌年復活するんです。
これ、かなり太っ腹な制度ですよね。
2.2 つみたて投資枠と成長投資枠の違い
新NISAには、2種類の投資枠があります。
ここを理解することが、60代の投資戦略を考える上で重要です。
| つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
| 年間投資上限 | 120万円 | 240万円 |
| 投資対象 | 金融庁が指定した投資信託 | 株式、投資信託、ETFなど |
| 投資方法 | 積立購入のみ | 一括購入・積立購入どちらも可 |
| 向いている人 | 投資初心者・コツコツ派 | 投資経験者・まとまった資金がある人 |
| IT用語で言うと | 月額サブスク型 | 買い切りソフト型 |
60代の方におすすめしたいのは、「両方の枠を併用する」こと。
これが新NISAの最大のメリットです。
旧NISAでは「つみたてNISA」と「一般NISA」のどちらか一方しか選べませんでした。
新NISAでは両方を同時に使えるので、つみたて投資枠で毎月コツコツ積み立てながら、成長投資枠で高配当株に投資する、という戦略が取れるんです。
2.3 旧NISAとの違いを一覧で確認
すでに旧NISAを使っていた方のために、新旧の違いを整理しておきましょう。
| 旧NISA(〜2023年) | 新NISA(2024年〜) | |
| 制度の恒久性 | 時限措置(期限あり) | 恒久化(ずっと使える) |
| 非課税保有期間 | 5年 or 20年 | 無期限 |
| 年間投資枠 | 最大120万円 | 最大360万円 |
| 生涯非課税限度額 | なし(年間上限のみ) | 1,800万円 |
| 枠の併用 | 不可(どちらか一方) | 可能(両方使える) |
| 売却後の枠復活 | なし | 翌年に復活 |
ちなみに、2023年までに旧NISA口座を持っていた方は、2024年1月から自動的に新NISA口座が開設されています。
旧NISA口座の残高はそのまま非課税で保有でき、新NISAの枠とは別扱いです。
つまり、旧NISA+新NISAの「二段構え」で非課税運用ができるということですね。
3. 60代の新NISAの始め方【4ステップ】

ここからは、実際に新NISAを始めるための具体的な手順を解説します。
「難しいんじゃないか」と構える方も多いですが、正直に言います。
スマホでネットショッピングができるレベルの方なら、十分にできます。
エンジニアとして断言しますが、これはシステムの操作としてはかなりシンプルな部類です。
3.1 STEP1:証券会社を選ぶ(ネット証券がおすすめ)
まず最初にやることは、NISA口座を開設する証券会社を選ぶことです。
ここで一つ、声を大にして言いたいことがあります。
銀行の窓口で言われるがまま口座を開設しないでください。
銀行が悪いわけではありません。
ただ、銀行のNISA口座は、取り扱う投資信託の種類が少なく、手数料(信託報酬)が高い商品が多い傾向にあります。
一方、ネット証券(楽天証券やSBI証券など)は、品揃えが圧倒的に豊富で、手数料も最安水準です。
60代に人気のネット証券を比較してみましょう。
| 楽天証券 | SBI証券 | |
| NISA売買手数料 | 無料 | 無料 |
| 投資信託の取扱数 | 約2,600本 | 約2,700本 |
| クレカ積立 | 楽天カード(最大1%還元) | 三井住友カード(最大3%還元) |
| 操作性 | ◎ 初心者に分かりやすい | ○ 慣れれば使いやすい |
| ポイント投資 | 楽天ポイント | Vポイント・Pontaポイント |
| 60代からの人気 | ◎ 1位(オリコン調査) | ○ 2位 |
どちらを選んでも、大きな失敗はありません。
迷ったら、すでに楽天カードを持っている方は楽天証券、三井住友カードを持っている方はSBI証券が便利です。
「結局どっち?」と言われたら、操作の分かりやすさで楽天証券をおすすめすることが多いですね。
もちろん、これは私の主観ですので、ご自身で試してみてください。
3.2 STEP2:口座開設の手順(マイナンバーカードを準備)
証券会社が決まったら、次は口座開設です。

口座開設って、面倒な書類がたくさん必要なんじゃないの? 銀行の窓口に行かなきゃダメかしら…

テルさん、大丈夫ですよ。今はスマホ1台で全部完結します。必要なのはマイナンバーカードだけ。窓口に行く必要はありません。
口座開設の手順は、以下のとおりです。
マイナンバーカードがない場合は、「通知カード」+運転免許証でも可能です。ただし、マイナンバーカードがあると手続きが格段に早くなります。
楽天証券なら「口座開設はこちら」ボタンから。SBI証券なら「口座開設(無料)」ボタンから。いずれもスマホ対応しています。
名前、住所、生年月日などの基本情報を入力し、マイナンバーカードの表裏をスマホで撮影してアップロードします。ここまで約10分。
証券口座の開設と同時に、NISA口座の開設もチェックボックスで申請できます。忘れずに「NISA口座を開設する」にチェックを入れましょう。
NISA口座は一人一口座のため、税務署が「他で開設していないか」を確認します。この審査に1〜3週間かかりますが、待っている間にすることは何もありません。コーヒーでも飲んでいてください。
思ったより簡単だと感じませんか?
私が驚いたのは、申し込みボタンを押してから10分程度で手続きが完了すること。
かつて銀行の窓口で1時間待たされた経験がある身としては、「こんなに楽でいいのか」と拍子抜けしましたね。
3.3 STEP3:投資商品を選ぶ(60代にぴったりの商品は次章で)
口座開設が完了したら、次は「何を買うか」を決めるステップです。
ここが新NISAの最も重要なステップであり、同時に最も悩むポイントでもあります。
焦る必要はまったくありません。
口座を開設しただけでは1円も減りませんから(笑)。
次の章で、60代に適した投資商品を具体的に解説しますので、じっくり読んでから決めてください。
3.4 STEP4:積立設定をして放置(毎月チェックしなくてOK)
投資商品が決まったら、あとは積立設定を行うだけ。
「毎月〇日に、〇万円分の〇〇ファンドを購入する」という設定を一度すれば、あとは自動で毎月購入してくれます。
ここでおすすめしたいのが、クレジットカード積立(クレカ積立)です。
楽天証券なら楽天カード、SBI証券なら三井住友カードを使って、投資信託の購入代金をカード決済できます。
これの何が嬉しいかというと、投資をするだけでポイントが貯まるんです。
月10万円の積立なら、楽天証券で最大1,000ポイント(1%還元の場合)。
「投資しながらポイントも貯まる」なんて、正直、良い時代になったものです。
そして一つ、重要なマインドセットをお伝えします。
積立設定をしたら、毎日チェックしなくてOKです。
むしろ、毎日の値動きを気にしすぎるのは逆効果。
月に1回、スマホアプリで「ふーん、こんな感じか」と確認するくらいがちょうどいい。
料理を煮込んでいる時と同じです。鍋の蓋を何度も開けると、逆に上手く煮えません。
4. 60代に適した新NISA投資商品の選び方

さて、ここからが本題です。
「結局、何を買えばいいの?」
60代の方が最も知りたいのは、この答えではないでしょうか。

ヒロさん、投資信託って何千種類もあるのよね? 選べないわよ…

テルさん、安心してください。60代が検討すべき商品は、実はそんなに多くありません。ポイントは3つだけです。
4.1 つみたて投資枠:インデックスファンドが鉄板
つみたて投資枠で選ぶべきは、低コストのインデックスファンド——これが結論です。
「インデックスファンド」とは、市場全体の動きに連動する投資信託のこと。
IT用語で言えば、「市場という巨大なデータベースの全件コピー」のようなものです。
個別の企業を選ぶ必要がないので、初心者でも安心。
60代におすすめのインデックスファンドを3つ紹介します。
| 商品名 | 投資対象 | 信託報酬(年) | こんな人向き |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 世界中の株式約3,000社 | 約0.05775% | 「世界全体に分散したい」人 |
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 米国の代表的な500社 | 約0.09372% | 「アメリカの成長力に乗りたい」人 |
| eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) | 株式・債券・不動産に分散 | 約0.143% | 「リスクをとことん抑えたい」人 |
信託報酬(手数料)の数字を見てください。
年間0.05〜0.14%程度。100万円預けても、年間の手数料は500〜1,400円程度です。
これが、銀行の窓口で勧められる投資信託だと、信託報酬が1%を超えることも珍しくありません。
100万円で年間1万円以上の差。10年で10万円以上の差です。
「コストは確実なマイナスリターン」——これはエンジニアもファンドマネージャーも共通の認識ですね。
4.2 成長投資枠:高配当株・高配当ETFという選択肢
成長投資枠では、もう一つの戦略があります。
それが、「高配当株・高配当ETFで定期的な配当金を受け取る」という方法です。
これは60代の資産運用にとって非常に相性がいい。
なぜなら、株を売らなくても、定期的にキャッシュ(配当金)が入ってくるからです。
年金にプラスして、3ヶ月に一度、配当金が口座に入る。
しかも新NISA口座なら、その配当金に税金がかからない。
通常なら約20%引かれる税金がゼロですから、これは大きなメリットです。
検討に値する高配当ETFの例を挙げます。
| 商品名 | 市場 | 配当利回り目安 | 特徴 |
| VYM(バンガード 米国高配当株式ETF) | 米国 | 約2.5〜3.5% | 安定した大型高配当株に分散 |
| HDV(iシェアーズ コア米国高配当株ETF) | 米国 | 約3.0〜4.0% | 財務健全な高配当銘柄を厳選 |
| 日経高配当株50ETF(1489) | 日本 | 約3.0〜4.0% | 日本の高配当株50銘柄に分散 |
ただし、注意点が一つ。
「配当利回りが高い」というだけで飛びつかないでください。
利回りが異常に高い銘柄は、業績悪化で株価が急落した結果、利回りが上がっているだけのケースがあります。
これはITで言えば「表面上の高スペックに騙されて、中身がスカスカのソフトを買ってしまう」のと同じです。
4.3 60代がやってはいけない商品選び3つ
ここからは逆に、「やってはいけないこと」を明確にしておきます。
60代の投資で一番怖いのは、「取り返しのつかない失敗」です。
若い世代なら30年かけて取り返せるミスも、60代では致命的になりかねません。
- ❌ 銀行に勧められるまま高手数料の投資信託を買う:窓口で「今一番人気です」と言われても、信託報酬が1%を超える商品は避けましょう。ネット証券なら0.1%以下の優良商品がゴロゴロあります。
- ❌ レバレッジ型・テーマ型ファンドに手を出す:「AI関連2倍ブル」「半導体レバレッジ」のような商品は、値動きが激しく、長期保有に向きません。60代のポートフォリオに入れるべきではありません。
- ❌ 退職金を全額一括投資する:これは次の章で詳しく解説しますが、まとまった資金を一度に全額投入するのは非常に危険です。市場のタイミングは誰にも読めません。
5. 退職金を新NISAで運用する際の注意点

60代の新NISA活用で、避けて通れないテーマがあります。
それは、退職金の運用です。

退職金があるなら、ガツンと一括で投資しちゃえばよくないっすか? 非課税枠もったいないし。

タケシくん、そういう甘い考えが一番危ないのよ。退職金は人生の最終ボーナスなんだから、慎重にいかないと。
5.1 退職金の一括投資はNG!「分割投入」が鉄則
退職金をまとめて一度に投資するのは、絶対にやめてください。
理由はシンプルです。
投資のタイミングを完璧に当てることは、プロでも不可能だからです。
例えば、退職金1,500万円を全額投資した翌月に、リーマンショック級の暴落が来たらどうなるか。
資産が半分になることも珍しくありません。
750万円が一瞬で消える恐怖——想像するだけで胃が痛くなりますよね。
おすすめは、退職金を5年に分けて投入する計画です。
- 年間投資額:300万円(月25万円ペース)
- つみたて投資枠:月10万円 × 12ヶ月 = 120万円/年
- 成長投資枠:月15万円 × 12ヶ月 = 180万円/年
- 5年で合計1,500万円 → 非課税枠をほぼ満額活用
このように分割して投入すれば、株価が高い時期にも安い時期にも買うことになります。
結果として、購入単価が平均化され、リスクが抑えられるんです。
これを「ドルコスト平均法」と言いますが、要は「一気に賭けず、分散して賭ける」というシンプルな戦略です。
5.2 投資に回すお金と「手をつけないお金」の分け方
退職金があるからと言って、全額を投資に回してはいけません。
まず確保すべきは、「生活防衛資金」です。
具体的には、生活費の2〜3年分を預貯金として手元に残してください。
例えば、月の生活費が25万円のご家庭なら…
- 生活防衛資金:25万円 × 24ヶ月 = 600万円(預貯金で確保)
- 投資可能資金:退職金1,500万円 − 600万円 = 900万円
- この900万円を3〜5年に分けて新NISAに投入する
生活防衛資金は、病気や介護など「想定外の出費」に備えるお金です。
これがあるからこそ、投資で一時的に含み損が出ても「売らずに待つ」ことができます。
システムで言えば、「バックアップ」を取ってから作業するのと同じ発想ですね。
5.3 銀行から勧められる「退職金専用プラン」の罠
退職金が振り込まれると、高い確率で銀行から電話がかかってきます。
「退職金専用の特別金利プランがございます」——この言葉には要注意です。
よくあるパターンがこれです。
「3ヶ月間、年利5%の特別金利を適用します! ただし、退職金の50%以上を指定の投資信託でご購入いただくことが条件です」
一見お得に見えますが、冷静に計算してみましょう。
退職金1,000万円の場合:
- 定期預金500万円 × 5% × 3/12ヶ月 = 約6.25万円の利息
- 投資信託500万円 × 購入手数料2% = 10万円の手数料
- さらに投資信託の信託報酬が年1.5%なら、年間7.5万円のコスト
利息6.25万円をもらうために、初年度だけで17.5万円以上のコストを払っている。
完全に赤字です。
銀行を責めるつもりはありません。銀行も商売ですから。
ただ、「自分で選ぶ力を持つ」ことが、60代の資産を守る最大の武器になります。
6. 60代の新NISA「出口戦略」——運用しながら取り崩す方法

新NISAで資産を増やすことも大事ですが、60代にとってもう一つ重要なテーマがあります。
それは、「増やしたお金をどうやって使うか」という出口戦略です。

増やすのは分かったけど…実際にお金を使いたい時って、全部売るの?

それが一番もったいない方法なんですよ、テルさん。「運用しながら少しずつ取り崩す」のがコツ。お金に働き続けてもらうんです。
6.1 「全部売って現金化」は最悪手
よくある間違いが、「まとまったお金が必要になったら、全部売ればいい」という考え方。
これには2つの問題があります。
- 問題①:株価が下がっている時に売ると、安値で手放すことになる
- 問題②:残りの資産が非課税で運用を続ける機会を失う
60代、70代の資産運用は「全額引き出してゴール」ではありません。
「運用を続けながら、必要な分だけ取り崩す」——これが正解です。
6.2 定率取り崩し vs 定額取り崩し
取り崩しの方法は、大きく2つあります。
| 定率取り崩し | 定額取り崩し | |
| 仕組み | 資産残高の一定%ずつ取り崩す | 毎月(毎年)決まった額を取り崩す |
| メリット | 資産が長持ちしやすい | 生活費の計画が立てやすい |
| デメリット | 受取額が変動する | 市場下落時に資産が早く減る |
| 向いている人 | 年金で最低限の生活費は足りる人 | 毎月一定額が必要な人 |
私がおすすめするのは、「前半は定率取り崩し、後半は定額取り崩し」の組み合わせです。
資産が多い老後の前半(65〜80歳頃)は、定率で取り崩すことで資産を長持ちさせます。
資産が減ってきた後半(80歳以降)は、定額に切り替えて安定した受取額を確保する。
「前半守備重視、後半安定重視」のハイブリッド戦略ですね。
6.3 高配当株の配当金で「自動取り崩し」を実現
もう一つ、非常に優れた出口戦略があります。
それは、高配当株やETFの配当金をそのまま「生活費の足し」にするというシンプルな方法です。
例えば、成長投資枠で1,000万円分の高配当ETFを保有し、配当利回りが3%だとすると…
年間30万円の配当金が、売却することなく自動的に入ってきます。
新NISA口座なら非課税ですから、30万円がまるまる手取りです。
月に換算すると約2.5万円。
年金22万円に2.5万円が上乗せされれば、月24.5万円。
決して大金ではありませんが、「自分で稼いだ上乗せ」の安心感は大きいものです。
7. 【最新】プラチナNISAとは?65歳以上向けの新制度

ここで、60代の方にとって見逃せない最新動向をお伝えします。
金融庁が2026年度の税制改正に向けて検討を進めている、「プラチナNISA」という新制度です。
7.1 プラチナNISAの概要と導入時期
プラチナNISAの主なポイントは以下のとおりです。
- 対象者:65歳以上の高齢者に限定される見込み
- 最大の特徴:現行NISAでは対象外の「毎月分配型投資信託」が投資対象になる
- 目的:シニアの「資産取り崩し」を非課税でサポートする
- 導入時期:早ければ2026年。ただし、2025年12月の税制改正大綱で確定
- 現行NISAとの関係:別枠になる可能性あり
出典:金融庁公式サイトの税制改正要望関連資料より
7.2 毎月分配型投資信託のメリットと注意点
毎月分配型投資信託とは、毎月定期的に分配金が支払われるタイプの投資信託です。
「毎月お小遣いが入る」イメージなので、シニアに人気がありました。
しかし、現行NISAではこの商品は対象外。
なぜなら、元本を取り崩して分配金を出している場合があるからです。
つまり、「利益から分配しているフリをして、実は自分の預けたお金を返しているだけ」というケースがあるんです。
これはIT用語で言えば、「見かけ上の処理速度は速いが、裏でメモリを食い潰している」ような状態。
プラチナNISAが始まっても、毎月分配型を選ぶ場合はその分配金の中身(元本取り崩しの割合)を必ず確認しましょう。
7.3 今すぐできること:新NISAで土台を作っておく
「プラチナNISAが始まるまで待った方がいいのでは?」
この疑問への答えは、「NO」です。
理由は3つあります。
- プラチナNISAの制度詳細はまだ確定していない
- 待っている間も、預貯金はインフレで目減りし続ける
- 現行の新NISAでも十分に60代向けの運用が可能
まずは現行の新NISAでしっかり土台を作り、プラチナNISAが始まったら追加で活用する。
これが最も合理的な戦略です。
ちなみに、2026年度の税制改正では、新NISAの非課税枠が「売却した年内に復活する」ルール変更も予定されています。
現在は翌年に復活するルールですが、これが当年中に変わると、より機動的な資金運用が可能になります。
制度は着実に改善されていますので、最新情報は金融庁のサイトをこまめにチェックしてくださいね。
8. 60代で新NISAを始める時の心構え

制度や商品の知識も大事ですが、実は最も重要なのは「メンタル」です。
投資で失敗する人の多くは、知識不足ではなく、感情に振り回されて判断を誤ります。
8.1 値下がりした時のメンタル管理
新NISAで投資を始めると、必ず「含み損」を経験する日が来ます。
スマホを開いたら、資産がマイナス10万円になっている——。
胃がキュッと収縮して、「やっぱり売った方がいいのでは」と思い始める。
ここで売ったら負けです。
歴史を見てください。
2008年のリーマンショックで株価は半分以下になりましたが、5年後には完全に回復し、10年後には大幅に上昇しています。
2020年のコロナショックでも同じ。暴落時に売らずに持ち続けた人は、全員が含み益になっています。

値下がりはバグみたいなものです。バグが出たからと言って、すぐにシステムを捨てたりしませんよね。冷静にデバッグ(状況分析)して、原因を特定する。それと同じです。
8.2 家族に説明しておくこと
60代で投資を始める場合、配偶者の理解を得ることも重要です。
「大事なお金で投資なんて」と不安に思う方も多いでしょう。
家族に伝えるべきポイントはこの3つです。
- 生活防衛資金は別に確保してあること(無理な投資ではない)
- 非課税制度(新NISA)を使っていること(合法的な節税手段である)
- 万が一の時の口座情報を残しておくこと(証券会社名、ログインID、緊急連絡先)
特に3番目は大切です。
NISA口座の資産は、本人が亡くなった場合、相続人に引き継がれます(ただし非課税の恩恵は終了します)。
口座の存在を家族が知らなければ、「知らない口座に眠る資産」として放置されるリスクがあります。
8.3 情報収集は「公式ソース」を重視する
最後に、元エンジニアとして強く言いたいことがあります。
投資情報は「一次ソース」を確認してください。
YouTubeやSNSで「絶対儲かる投資法」を語る人は、正直、無数にいます。
しかし、その情報が正しいかどうか、どうやって判断しますか?
信頼できる情報源は限られています。
- 金融庁 NISAの概要ページ
- 日本証券業協会
- 各証券会社の公式サイト(楽天証券、SBI証券など)
- 厚生労働省(年金・社会保障関連)
40年間、システム障害の原因を追及してきた経験から断言します。
「一次ソースを確認しない人は、投資でも仕事でも、最終的に損をする」——これは鉄則です。
9. まとめ:60代の新NISA「アクションプラン」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
長い記事になりましたが、最後にポイントを整理しましょう。
この記事でお伝えしたかったことは、たった一つです。
「60代から新NISAを始めることは、まったく遅くない。むしろ、今が始め時だ」
その理由をまとめると:
- 新NISAに年齢制限はない(iDeCoとは違う)
- 非課税保有期間が無期限になった
- 60代でもまだ20〜30年の運用期間がある
- つみたて投資枠と成長投資枠の併用で柔軟な戦略が取れる
- 高配当株の配当金で「年金の上乗せ」ができる
- プラチナNISAなど、今後さらに制度が拡充される見込み
そして、具体的な行動に移すためのTo-Doリストを用意しました。
- □ 生活防衛資金(生活費の2〜3年分)を預貯金で確保する
- □ 投資に回せる余裕資金の額を計算する
- □ マイナンバーカードを手元に準備する
- □ ネット証券(楽天証券 or SBI証券)で口座開設を申し込む
- □ つみたて投資枠で低コストインデックスファンドを1つ選ぶ
- □ 月の積立額を決めて、クレカ積立の自動設定をする
- □ 慣れてきたら、成長投資枠で高配当ETFを検討する
- □ 出口戦略(取り崩し方法)を考えておく
- □ 家族に口座情報を共有する
面倒ですか?
はい、少し面倒です(笑)。
でも、退職後の手続きラッシュを乗り越えた皆さんなら、大丈夫。
役所の書類に比べれば、証券口座の開設なんて楽なものです。

制度は複雑だけど、知っている人だけが得をする。「知らない」が一番のリスクだよ。一つ一つクリアしていきましょう。終わればスッキリします。
10. よくある質問(FAQ)

最後に、60代から新NISAを始める方から多く寄せられる質問にお答えします。
- 60代で新NISAを始めるのは本当に遅くないですか?
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遅くありません。新NISAには年齢制限がなく、非課税保有期間も無期限です。60歳でも平均余命は男性約24年、女性約29年。20年以上の長期運用が可能です。「遅すぎる」のは「始めないこと」だけです。
- 新NISAで損をした場合、確定申告は必要ですか?
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NISA口座内の取引は、利益が出ても損失が出ても確定申告は不要です。ただし注意点として、NISA口座内の損失は、他の課税口座(特定口座など)の利益と損益通算できません。これはNISAのデメリットの一つです。
- 夫婦それぞれで新NISA口座を開設できますか?
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はい、できます。NISA口座は一人一口座です。夫婦でそれぞれ開設すれば、合計で年間720万円(360万円×2人)、生涯で3,600万円(1,800万円×2人)の非課税枠が使えます。ぜひ夫婦で活用してください。
- 新NISAの口座は銀行と証券会社どちらがいいですか?
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圧倒的に「ネット証券」をおすすめします。理由は、投資信託の取扱数が多く、手数料が安いためです。銀行のNISA口座は取扱商品が限られ、信託報酬が高い商品が多い傾向にあります。楽天証券やSBI証券なら、NISA口座の売買手数料も無料です。
- 毎月いくらから積立できますか?
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楽天証券やSBI証券であれば、月100円から積立が可能です。「いきなり大金はちょっと…」という方は、まず月1万円や月5,000円から始めても全く問題ありません。大切なのは「始めること」です。金額は後からいつでも変更できます。
- プラチナNISAが始まるまで待った方がいいですか?
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待つ必要はありません。プラチナNISAの制度詳細はまだ確定しておらず、導入時期も不透明です。待っている間にも預貯金はインフレで目減りします。まずは現行の新NISAで土台を作り、プラチナNISAが始まったら追加で活用するのが最善の戦略です。
- 新NISAで得た利益に税金はかかりますか?
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かかりません。新NISAの最大のメリットが、投資で得た利益(売却益・配当金・分配金)が非課税になることです。通常なら約20.315%かかる税金がゼロになります。100万円の利益なら約20万円の節税効果。非課税期間は無期限ですので、長く運用するほどお得です。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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